蜂の巣の駆除は、その成否と安全性が、作業を行う「時間帯」に大きく左右される、極めて戦術的な行為です。蜂の活動時間を知り、彼らの習性の裏をかくことこそが、リスクを最小限に抑え、確実に駆除を成功させるための鉄則と言えます。結論から言えば、蜂の巣駆除に最も適した時間帯は「日没後2〜3時間経過した夜間」です。なぜなら、この時間帯は蜂にとって最も活動が鈍り、無防備になる瞬間だからです。その理由は複数あります。第一に、夜間はほとんどの蜂が巣に戻ってきています。昼間に駆除を行うと、餌集めのために外に出ていた働き蜂が駆除を免れ、後に「戻り蜂」となって巣の周りを飛び回り、危険な状況が続きます。夜間に巣を叩けば、女王蜂や働き蜂をまとめて一網打尽にできる可能性が格段に高まります。第二に、蜂は夜間、暗闇の中では視力がほとんど効かず、うまく飛ぶことができません。気温の低下も相まって、活動は極めて鈍くなります。昼間のように俊敏に飛び回って反撃してくるリスクが大幅に減少し、作業をより安全に行うことができます。第三に、光に集まる習性を利用できる点です。作業の際、巣に直接光を当てるのは蜂を刺激するため避けるべきですが、少し離れた場所に懐中電灯などの光源を置いておくことで、万が一、巣から飛び出してきた蜂がいても、その光に誘引され、作業者から注意をそらすことができます。逆に、最も避けるべきなのは、蜂の活動がピークに達する「日中の時間帯」です。この時間帯に巣を刺激することは、最も警戒心が高く、攻撃的な状態の蜂に喧嘩を売るようなものであり、自殺行為に等しいと言えます。焦って昼間に手を出したくなる気持ちを抑え、蜂が眠りにつく夜を待つ。その冷静な判断力と忍耐力こそが、自力での蜂駆除を成功させるための最大の武器となるのです。