近年の住宅で主流となっている、表面に多数の丸いくぼみ(ディンプル)がある「ディンプルキー」。その高い防犯性能は広く知られていますが、いざスペアキーを作ろうとすると、ホームセンターなどでは簡単に断られてしまいます。なぜ、ディンプルキーのスペア作成は、これほどまでに難しいのでしょうか。その背景には、ディンプルキーが持つ防犯性を支える、技術的・制度的な複数の高いハードルが存在します。第一の理由は、構造の圧倒的な複雑さです。従来のギザギザした鍵のピンが上下方向にしか動かないのに対し、ディンプルキーのピンは上下左右、斜めなど三次元的に配置されています。その組み合わせは数億通り以上にもなり、ピッキングによる不正解錠を極めて困難にしています。この立体的にして複雑な構造を、コンマミリ単位の精度で正確にコピーすることは、汎用的なキーマシンでは物理的に不可能です。複製には、コンピューター制御の高精度な専用マシンが不可欠となります。第二に、ブランクキー(元の鍵)の特許と流通制限という制度的な壁です。鍵メーカーは、自社製品のセキュリティを守るため、ディンプルキーの形状や技術に特許を取得し、法的に保護しています。そして、そのブランクキーを、契約を結んだ正規代理店や、高い技術力を持つと認定した一部の鍵専門店にしか供給しない、という厳格な流通管理を行っているのです。これにより、誰でも簡単にブランクキーを入手し、不正な合鍵が作られるのを防いでいます。ホームセンターなどは、そもそも材料となるブランクキーを手に入れることすらできないのです。第三に、**所有者情報を登録する「登録制システム」**の存在です。特に防犯性の高いディンプルキーでは、メーカーがキーナンバーと所有者の情報を紐づけて管理しており、合鍵を作成する際には、身分証明書などによる厳格な本人確認を経て、メーカーに直接注文しなければならない仕組みになっています。これらの理由から、ディンプルキーのスペア作成は、意図的に「簡単にはできない」ように設計されているのです。それは、あなたの財産を不正な合鍵から守るための、重要なセキュリティ・ポリシーと言えるでしょう。
ディンプルキーのスペア作成が難しい理由